さまざまな行政サービスを電子申請する場合に必要となるのが、gBizIDプライムです。
gBizIDを利用すると、いつでもどこからでも申請可能になります。
しかし、行政サービスを利用する際に必要になることは分かっていても、gBizIDプライムについて詳しく知っている人は少ないのではないでしょうか。
ここではgBizIDプライムの詳細やgBizIDが必要となる行政サービス、登録方法について解説していきます。
この記事で分かる事
- gBizIDプライムとは法人代表者や個人事業主の共通認証システムアカウント
- gBizIDには3種類のアカウントがある
- gBizIDプライムを必要とする補助金制度あり
- いつでも簡単に利用できることがgBizIDの良い点
- 事前に必要な書類を用意することでスムーズに手続きできる
gBizIDプライムとは共通認証システムのアカウント
gBizIDプライムとは、法人代表者や個人事業主のアカウントのことをいいます。
そもそもgBizIDとは、法人や個人事業主のための共通認証システムのことです。
gBizIDのアカウントがあると、1つのIDとパスワードでインターネットからさまざまな行政サービスの申請ができます。
近年、電子申請を利用する人は増加傾向にあり、gBizIDプライムを利用する人も増えています。
gBizIDプライムを利用する際には、現在では料金はかかりません。
さらに、アカウントに有効期限なども設けられていないため、登録申請だけでも済ませておきましょう。
gBizIDには委任申請制度もある
自分自身のgBizIDアカウントを登録する以外に、委任申請の登録もあります。
委任申請とは、社会保険労務士や税理士、行政書士などに手続きを依頼している場合に委任先を登録することです。
gBizIDを自身が持っていない場合でも、委任先がアカウントを持っていると委任先として登録可能です。
しかし委任制度は、gBizIDが提供するすべてのサービスで利用できるわけではないため、それぞれの行政サービス側に問い合わせをしましょう。
GビズIDの委任機能を用いて委任関係を結ぶ場合は、委任者と受任者の間で委任の内容について、契約の凍結その他適切な方法によりあらかじめ合意を形成してください。(利用規約 第15条)
引用元:よくある質問 5-2.GビズIDのアカウントを取得していない場合に、委任申請を行うことができますか?
gBizIDはアカウントでgBizIDプライムはアカウントの中の1つ
gBizIDとは、さまざまな行政サービスの申請を行う際に必要なアカウントです。
gBizIDが導入された背景には、利用者のアカウント管理が複雑だったことがあげられます。
従来の法人向けオンラインサービスは、手続きシステムごとにIDとパスワードを作成する必要がありました。
しかしgBizIDを活用すると、各行政サービスに1つのIDとパスワードでログインできます。
さらに、IDを発行する時に本人確認書類を提出するだけでその後の手続きには本人確認書類は必要ありません。
利用者が手続きにかかる手間が減るだけでなく、手続きシステムの構築コストも削減できるため、gBizIDはさらに利便性が拡大して進化していくでしょう。
gBizIDプライムは、gBizIDで使用するアカウントの中の1つを意味します。
gBizIDには3種類のアカウントがある
gBizIDには、3種類のアカウントがあります。
gBizIDプライム | 会社代表者もしくは個人事業主 書類審査あり 使用可能な行政サービス多数あり スマートフォン必要 IDとパスワードに加え所有物認証による二要素認証 |
---|---|
gBizIDメンバー | gBizIDプライム収得している従業員 書類審査を行わない発行 使用可能な行政サービスに制限あり スマートフォン必要 IDとパスワードに加え所有物認証による二要素認証 |
gBizIDエントリー | 事業をしている人なら誰でも使用可能 書類審査を行わずオンラインで発行 使用可能な行政サービスに制限あり スマートフォン不要 IDとパスワードを用いた単要素認証 |
参照元:GビズID
表から分かるように、gBizIDプライムは会社の代表者や個人事業主の人が審査を得て利用できるため、さまざまな行政サービスの使用が可能です。
gBizIDメンバーやエントリーは審査不要で利用できますが、利用できる行政サービスに制限があります。
一方でgBizIDエントリーとgBizIDプライムの両方の取得はできず、gBizIDプライムを収得した場合はgBizIDエントリーを収得する必要はありません。
さらに、利用できる行政サービス内容もアカウントによって異なります。
行政サービス内容 | gBizIDプライム | gBizIDメンバー | gBizIDエントリー |
---|---|---|---|
IT導入補助金2022 | ◯ | ― | ー |
e-Gov | ◯ | ◯ | ◯ |
石綿事前調査結果報告システム | ◯ | ◯ | ◯ |
ISMAPポータルサイト | ◯ | ◯ | ー |
一元的な輸出証明書発給システム | ◯ | ◯ | ー |
金融庁電子申請・届出システム | ◯ | ◯ | ◯ |
経営力向上計画申請プラットフォーム | ◯ | ◯ | ◯ |
鉱業原薄登記更新サイト | ◯ | ◯ | ー |
再生可能エネルギー電子申請システム | ◯ | ◯ | ー |
Gビズフォーム | ◯ | ◯ | ◯ |
jGrants | ◯ | ◯ | ー |
事業継続力強化計画電子申請システム | ◯ | ◯ | ー |
社会保険手続きの電子申請 | ◯ | ◯ | ー |
住宅瑕疵担保履行法 基準日届出システム | ◯ | ◯ | ー |
省エネ法・温対法・フロン法電子報告システム(EEGS) | ◯ | ◯ | ー |
食品衛生申請等システム | ◯ | ◯ | ◯ |
情報処理支援機関【スマートSMEサポーター】認定制度 | ◯ | ◯ | ー |
石油流通ネット | ◯ | ◯ | ー |
賃貸住宅管理業登録等電子申請システム | ◯ | ◯ | ー |
DX推進ポータル | ◯ | ◯ | ◯ |
電ガネット | ◯ | ◯ | ー |
ドローン情報基盤システム(登録機能) | ◯ | ◯ | ー |
認定経営革新等支援機関電子申請システム | ◯ | ◯ | ー |
農林水産省共通申請サービス | ◯ | ◯ | ◯ |
肥料情報システム | ◯ | ◯ | ー |
保安ネット | ◯ | ◯ | ◯ |
ミラサポplus | ◯ | ◯ | ◯ |
みらデジ | ◯ | ◯ | ◯ |
令和元年度補正事業承継補助金 | ◯ | ◯ | ー |
参照元:GビズIDで利用できる行政サービス一覧(省庁・自治体)
3種類のアカウントそれぞれで利用できる行政サービスは異なるため、申請前に確認しましょう。
gBizIDプライムを必要とする補助金制度
さまざまな行政サービスの中で、gBizIDプライムが必要となる補助金制度があります。
- 事業再構築補助金
- ものづくり補助金
- IT導入補助金
- 小規模事業者持続化補助金
上記の補助金制度を電子申請で行う際には、gBizIDプライムが欠かせません。
以前は申請書類を郵送していた行政サービスも、現在ではgBizIDプライムを使用した電子申請のみとしているところが増えています。
gBizIDプライムが必要となる、各行政サービスの詳しい内容を解説していきます。
事業再構築補助金は中小企業の事業再構築を支援する補助金
事業再構築補助金とは、需要や売り上げの回復が期待できないなど、経済社会の変化に対応するための補助金です。
中小企業の事業再構築を支援することで、日本経済の構造転換を促す狙いがあります。
新分野展開・事業転換・業態転換など事業再構築に意欲的な中小企業を応援するものです。
参照元:事業再構築補助金
ものづくり補助金は小規模事業者が制度変更に対応するための補助金
ものづくり補助金とは、中小企業や小規模事業者等が今後直面するであろう制度変更(働き方改革や賃上げ、インボイス導入や被用者保険の適用拡大など)に対応するための補助金です。
主に革新的サービス開発や試作品開発、生産プロセスの改善を行うための設備などを支援します。
参照元:ものづくり補助金
ITツールを導入する際に利用できるのがIT導入補助金
IT導入補助金とは、中小企業や小規模事業者の人がITツールを導入する際に活用できる補助金です。
通常枠(A・B類型)に加えて、令和3年度補正予算にてデジタル化基盤導入枠、令和元年度補正予算にてセキュリティ対策推進枠も追加されました。
概要 | |
---|---|
通常枠(A・B類型) | 費用の2分の1、最大450万円を補助 様々な業種、組織形態に対応 自社の課題にあったITツールが導入できる IT導入支援事業者が申請、手続きをサポート |
セキュリティ対策推進枠 | サービス利用料の2分の1以内、最大100万円を補助 サービス利用料最大2年分補助 補助対象をサイバーセキュリティお助け隊サービスに特化 独立行政法人情報処理推進機構が登録、公表するサービス |
デジタル化基盤導入枠 | 補助額5万円〜50万円以下(補助率4分の3)、補助額50万円超〜350万円(補助率3分の2) PC、タブレット等のハードウェアにかかる購入費用も補助対象 会計ソフト、受発注ソフト、決済ソフト、ECソフトに補助対象を特化 クラウド利用料を最大2年分補助 |
参照元:IT導入補助金について
小規模事業者持続化補助金は販路開拓に幅広く使える補助金
小規模事業者持続化補助金とは、販路開拓に幅広く使える補助金です。
利用できる用途として挙げられるのが、ホームページの制作やチラシ作成、展示会の出店など幅広く活用できます。
通常枠の上限金額は50万円と高くはありませんが、活用しやすい補助金なため小規模事業者に人気があります。
しかし例年の採択率は、30〜40%前後で半分以上は不採択となっており、年々採択率が厳しくなっているのが現状です。
参照元小規模事業者持続化補助金
gBizIDプライムが利用できる電子申請手続き
gBizIDプライムを利用して申請できる電子申請は、以下の通りです。
- jGrants(経済産業省・補助金申請システム)
- IT導入補助金(経済産業省・中小企業庁・中小機構)
- 事業継続力強化計画電子申請システム(中小企業庁)
- 社会保険手続きの電子申請(日本年金機構)
- 保安ネット(経済産業省)
- DX推進ポータル(経済産業省 独立法人情報処理推進機構)
- 経済力向上計画申請プラットフォーム(経済産業省 ほか)
- 農林水産省共通申請サービス(農林水産省)
- 食品衛生申請等システム(厚生労働省)
- e-Gov(総務省)
上記のように、さまざまな手続きにgBizIDプライムは必要です。
gBizIDとe-Govの違い
gBizIDがさまざまな行政サービスの電子申請を行う共通認証システムであるのに対して、e-Govは電子申請の総合窓口と呼ばれています。
つまりe-Govは、行政サービスの情報ポータルサイトであり、サービスの1つに電子申請があるのです。
2020年11月下旬にe-Govがリニューアルされ、より便利に使いやすくなりました。
- gBizIDやオープンIDでログインできる
- マイページによく利用する情報が保存できる
- Mac用のソフトウェアの追加
- スマートフォンから処理状況が確認できる
e-Govの特徴は、以下の通りです。
料金 | 有料 |
---|---|
必要機器 | PC |
電子証明 | 必要 |
主な省庁の手続数 | 厚生労働省 3,624国土交通省 175金融庁 158経済産業省 140 |
参照元:e-Gov電子申請
gBizIDなどの電子申請を利用する良い点や悪い点
gBizIDを利用するにあたって、良い点はもちろん悪い点もあげられます。
gBizIDではさまざまな行政サービスの手続きを効率化できるうえ、電子申請義務化の流れなどから利用されています。
電子申請義務化とは、資本金等の額が1億円を超える等の特定の法人の事業所が社会保険に関する一部の手続きを行う場合には、必ず電子申請で行うことを義務化したものです。
令和2年4月から行政手続きコストの削減や電子申請の利用促進を促すために、開始されました。
参照元:電子申請の義務化|日本年金機構
さらに、社会保険や雇用保険の1部では電子申請も可能です。
経済産業省による補助金制度の申請は、gBizIDを必要としていることが多くあります。
gBizIDを利用することによる、良い点と悪い点をみていきましょう。
いつでも簡単に利用できるのがgBizIDの良い点
gBizIDなどの電子申請を利用することの良い点は、以下の通りです。
- いつでもどこでも簡単に手続きが可能
- 時間やコストの削減
- 情報を入力する手間が省ける
- 書類にハンコを押印する必要がない
gBizIDを利用することで、24時間365日自宅から手続きができるうえ、手間のかかる作業を省けます。
また、書類を提出する際にかかる交通費や時間も削減できるため無駄がありません。
今後も法人によるオンライン行政手続の利便性拡大を目指し、gBizIDは進化し続けていくでしょう。
手続きに手間がかかることがgBizIDを利用する悪い点
gBizIDなどの電子申請を利用することで生じる悪い点は、以下の通りです。
- 電子申請ができない行政サービスもある
- gBizIDのアカウントを作成するには時間がかかる
gBizIDなどの電子申請ができない行政サービスも、まだまだあるのです。
電子申請サービスは拡大していますが、利用したい行政サービスが電子申請を受け付けているか確認する必要があります。
さらに、gBizIDのアカウントを作成する際に必要な書類を準備することも手間がかかる作業です。
アカウントを早く発行したい人は、事前に必要になる書類を集めスムーズに手続きを進めましょう。
gBizIDプライムの登録は事前に必要な書類を集めることが大切
gBizIDプライムの登録方法は、以下の通りです。
- 作成に必要なものを用意する
- gBizIDのWebサイトで申請書作成
- 申請書を作成後郵送
- 審査状況をWebサイトで確認
- 届いたメールのURLをクリックする
- パスワードを登録後ログイン
登録方法の手順について、詳しく解説します。
1.作成に必要なものを用意する
gBizIDプライムを作成するためには、以下のものが必要です。
法人の場合 | ワンタイムパスワードを受信できるスマートフォンもしくは携帯電話 メールアドレス プリンター 印鑑証明書 代表社印 |
---|---|
個人事業主の場合 | ワンタイムパスワードを受信できるスマートフォンもしくは携帯電話 メールアドレス プリンター 印鑑登録証明書 個人の実印 |
まず、gBizIDのサイトからgBizIDエントリー作成を選択します。
作成を選択後オンラインで必要事項を入力して、即日作成可能なアカウントです。
2.gBizIDのwebサイトで申請書作成
gBizIDのサイトからgBizIDプライム作成を選択し、基本情報を入力の画面から入力して申請書を作成します。
法人か個人事業主を選択し、利用者情報の入力が必要です。
利用者情報 |
---|
|
規約に同意後、申請書が作成できます。
3.申請書を作成後郵送
gBizIDプライムのサイトを開き、申請書をダウンロードします。
印鑑証明書と登録印鑑に押印した申請書をGビズID運用センターへ郵送する必要があるため、事前に確認しましょう。
確認した申請書に、作成日を記入後郵送手続きを行います。
郵送した書類は、不備がなく審査を完了した場合や不受理の場合でも返却されません。
そのため、申請書の控えが必要な場合はあらかじめコピーをしておきましょう。
4.審査状況をwebサイトで確認
審査状況は、gBizIDのwebサイトで確認できます。
審査状況を確認できるのは申請から2ヶ月以内のデータのみで、申請時のアカウントIDと生年月日か電話番号の入力が必要です。
申込状況に、現在の申込状況が表示されます。
- 現在審査中です
- 登録申請が承認されました
- 審査は否認されています
上記の内容のいずれかが表示され、承認になっている場合は登録したメールアドレスにメールが届きます。
5.届いたメールのURLをクリックする
申請した書類に不備などがなく承認されると、メールが届きます。
届いたメールには、URLが記載されているためクリックします。
ワンタイムパスワードが登録された電話番号に届き、その入力を済ませて完了です。
6.パスワードを登録後ログインする
パスワード登録画面が表示され、今後使用するパスワードを半角8文字以上で設定します。
パスワードは、他人からの推測やツールなどで割り出しなどが難しいような、安全なパスワードを設定してください。
引用元:よくある質問3-27.パスワードはどのように設定するべきですか?
- 名前や生年月日などの個人情報からは推測できないこと
- 英単語などをそのまま使用しないこと
- アルファベットと数字が混在していること
- 適切な長さの文字列であること
- 類推しやすい並び方やその安易な組み合わせにしないこと
登録後、webサイトからログイン可能になりますが、2要素認証が必要です。
アカウントIDとパスワードを入力後、ワンタイムパスワードが登録された電話番号に届き、画面に入力することでログインできます。
2要素認証が手間に感じる人は、スマートフォンからgBizIDのアプリをダウンロードしましょう。
gBizIDのアプリであれば、ワンタイムパスワードが不要で、認証ボタンをクリックするだけでログインが可能です。
申請にかかる時間は早くて2週間程度
書類に不備がない場合は、2週間程度でアカウントは発行されます。
しかし、以下の場合は時間がかかる場合があります。
- 書類に不備がある(印鑑証明書が同封されていない、申請書と印鑑証明書の印鑑が異なる等)
- 既にアカウントをお持ちの方による重複申請
上記の場合は、不備内容やアカウント保有状況を確認する手間があります。
そのため、早めにアカウントを発行したい人は、事前に申請方法やアカウント保有状況を確認して申請しましょう。
補助金の申請を早く行うためにもgBizIDプライムに登録しよう
補助金の申請を早く行うためには、gBizIDプライムに登録し、電子申請で手続きを完結させます。
さらにgBizIDプライムは、24時間365日行政サービスの申請ができるため、忙しい人とっては頼りになるサービスです。
現在では、電子申請義務化の流れでgBizIDプライムから電子申請をする方法が推奨されています。
申請から審査、認証までを早く行うためにも、gBizIDプライムに登録して電子申請で行政サービスを利用しましょう。